ほとんど毎日、書店をのぞかないではいられない。だから、いつも平積みされた新着本には、興味がある。
ベストセラーは、無視できない。おめあての作家の新作は、いまかいまかと待ち望んでいる。
でも出版されて数十年、文庫化されて版を重ねて、いまだ読者を魅了するそんな本こそ見逃せない。
仕事や義務や義理ではなくて、ただ「何か読みたくなった」とき、心に引っ掛かった一冊を紹介します。
冷布亭氏からのご案内は、月に2回のお届け予定です。

[連載エッセイ No.37]

 

プロフィール
C.S.ルイス 作  瀬田貞二 訳
「ライオンと魔女/ナルニア国ものがたり1」

              岩波少年文庫 1985年10月第1刷 単行本 1966年5月 岩波書店
              原著 1950年発表

   こどもたちが洋服ダンスの中に入り込み毛皮のコートをかき分けると、そこは一面の銀世界。上半身は人間、下半身はヤギで心やさしいフォーンや、働き者で誠実なビーバー夫妻に出会い、正義のライオンとともに、白い魔女と戦い、ナルニア国を再建する。
   2005年に「ライオンと魔女」が映画化され、第2章の「カスピアン王子の角笛」も今年映画化、上映中のこの「ナルニア国ものがたり」は、「ハリー・ポッター」と同じく(と言っても本も映画も見ていないが)、ずっと昔から多くの子どもたちを魅了してきたに違いない。
   そもそも洋服ダンスが異国への出入り口なんていう設定は、のび太の机の引き出しからどらエもんがタイムマシンでやって来たこと想起させるし、妻夫木聡の部屋の洋服ダンスから織田信長やガリレオが飛び出てくる東京ガスのテレビCMに至っては、あのアイディアは「ナルニア国」そのものだったと思い当たる。

   訳者が瀬田貞二というのも、小生にとってはうれしい限り。トールキンの「ホビットの冒険」や「指輪物語」も訳した児童文学の泰斗だ。特に「ホビットの冒険」は今を去ることン十年前、小生、小学5年生の時に購入しボロボロになるまで何度も何度も繰り返し読んだ。寺島竜一の挿絵もいい。長じてまた手にいれ、時々思い出してはページを開いている。いまだに単行本も出ているが、うれしいことに岩波少年文庫版も刊行されている。”少年文庫”と馬鹿にしてはいけない。良質なファンタジーは、年齢も時間も飛び越えて人々に愛されるのだ。

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