ほとんど毎日、書店をのぞかないではいられない。だから、いつも平積みされた新着本には、興味がある。
ベストセラーは、無視できない。おめあての作家の新作は、いまかいまかと待ち望んでいる。
でも出版されて数十年、文庫化されて版を重ねて、いまだ読者を魅了するそんな本こそ見逃せない。
仕事や義務や義理ではなくて、ただ「何か読みたくなった」とき、心に引っ掛かった一冊を紹介します。
冷布亭氏からのご案内は、月に2回のお届け予定です。

[連載エッセイ No.41]

 

プロフィール
つかこうへい「初級革命講座 飛龍伝」

角川文庫 1977年11月第1刷

   前回のマイナス・ゼロ同様、本書も今年7月に「改版初版」として刊行された。書店をのぞくと昨今はちょっとした復刊ブームのようだが、つかこうへいと言えば、やはり舞台だ。「ストリッパー物語」「いつも心に太陽を」「寝とられ宗助」「広島に原爆を落とす日」・・・、書籍化、文庫化されている作品も少なくないが、今を去ること20~30ン年前、
   「つかこうへい事務所公演」と銘打ったポスターを見て、小生もいそいそと紀伊国屋ホールやパルコ劇場(その頃は西武劇場と言ったか)に足を運んだものだ。
   なかでも「熱海殺人事件」は幾度となく見た。現代演劇の”名作”として今も上演し続けられる「熱海」だが、ある頃からは若手の登竜門的な役割も担っていたようだ。メンズノンノモデルとして一世を風靡した阿部ちゃんがその後伸び悩み、つかに徹底的にしごかれ、オカマの部長刑事役で怪演し、現在の活躍のきっかけとなったのはよく知られたエピソードだ。

   「初級革命講座 飛龍伝」も舞台を見た覚えがある。当時、風間杜夫や死んでしまった三浦洋一、テレビ「世界の車窓から」のナレーターを務める石丸謙二郎らがつか芝居の常連だったが、映画「蒲田行進曲」で一躍名を挙げた平田満以外誰が出ていたのか思い出さないのは残念ではある。
   本書は、その小説版。
   60年代後半から70年前半に世の中を震撼させた全学連運動も今や昔、60年安保で勇名を馳せた全学連丸角派元副委員長熊田留吉はいまだ革命の夢を捨てられない。しかしその実情は、元機動隊員が入院する療養所での慰問「全学連ショー」や、視聴率目当てのテレビ局が音頭取りの全学連対機動隊の「闘争アワー」に出演して糊口をしのぐ毎日。世間からは見放され、自分自身の誇りも失った熊田の最後のよりどころが、かつて機動隊のジュラルミンの盾の数々を打ち破いた投石「飛龍」。全編パロディタッチで大いに笑わせてくれるが、いよいよ「飛龍」を投げんと熊田が立ち上がり独白するラストシーンは、「熱海殺人事件」同様、感動的ですらある。

   なお、カバーと文中のイラストは和田誠が担当しているが、描かれている熊田留吉は若いころの平田満にそっくりだ。久しぶりに「つか」が見たくなった。

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