ほとんど毎日、書店をのぞかないではいられない。だから、いつも平積みされた新着本には、興味がある。
ベストセラーは、無視できない。おめあての作家の新作は、いまかいまかと待ち望んでいる。
でも出版されて数十年、文庫化されて版を重ねて、いまだ読者を魅了するそんな本こそ見逃せない。
仕事や義務や義理ではなくて、ただ「何か読みたくなった」とき、心に引っ掛かった一冊を紹介します。
冷布亭氏からのご案内は、月に2回のお届け予定です。

[連載エッセイ No.83]

プロフィール
渡辺篤史「渡辺篤史のこんな家を建てたい」

講談社文庫 2001年5月 第1刷  単行本 1996年7月

   本屋の文庫本の棚を物色していたら、棚から飛び出ている本がある。ふつう文庫はほぼA6縦長サイズなのだが、その本はA6横長。小さな絵本のような体裁でなんとも珍しいが、文庫には違いない。ジャケ買いはその昔からレコード、CD、もちろん本もしているが、横長の文庫本はそれだけで「買い」。それが本書、今もテレビ朝日系で放映されている人気番組「渡辺篤史の建もの探訪」を書籍化したものだ。

   豪邸というのではない。どちらかと言えば、狭い敷地、変形の土地、限られた予算のなかで、建て主と建築家がアイディアと知恵を出し合った「狭いながらも楽しい我が家」が、カラー写真を多用しながら渡辺篤史の心やさしい目線で数多く紹介されている。曰く「日本初!テント屋根の未来型住宅」「三角形の傾斜地に建つ、ローコスト住宅」「壁に3000冊収納し、広い空間を確保」「古アパートが変身!超モダン住宅」・・・。いずれも快適であることは間違いなく、あれもいい、これもいいと、小生は指をくわえるほかはないが、本書で紹介されている家は、2010年現在から見ればすでに10数年以上前に建てられたものだから、モダンさや機能性にいささか色あせてみえる点があるのは致し方ないところでもある。
   それでも全部で70軒近くの家を「のぞき見」するのは何とも楽しい。なかには「ダリの言葉から生まれた柔らかい毛深い家」というのがあり、外から見るとキノコのようなドーム型の浴室があったりして、本当にお邪魔して「のぞき見」したくなる。

   横長の文庫本は確かにユニークだが、レイアウト・印刷・製本、店頭陳列などを考えると相当やっかいな代物のはずである。カラーページもかなりあり、紙も上質だから、文庫本としては値段が高い(税別1019円!)。「こんな家を建てたい」は、それでも「こんな本を作りたい」という担当編集者の思いが伝わってくる本でもある。

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