ほとんど毎日、書店をのぞかないではいられない。だから、いつも平積みされた新着本には、興味がある。
ベストセラーは、無視できない。おめあての作家の新作は、いまかいまかと待ち望んでいる。
でも出版されて数十年、文庫化されて版を重ねて、いまだ読者を魅了するそんな本こそ見逃せない。
仕事や義務や義理ではなくて、ただ「何か読みたくなった」とき、心に引っ掛かった一冊を紹介します。
冷布亭氏からのご案内は、月に2回のお届け予定です。

[連載エッセイ No.86]

プロフィール
山田風太郎「人間臨終図巻 T」

徳間文庫 2001年3月第1刷  単行本 1986年9月

   15歳で死んだ八百屋お七、大石主税から、55歳で死んだゴーギャン、大川橋蔵らまで、古今東西、没年齢順に300人以上の有名人の「死にざま」をつづった作品。ちなみに「U」は56歳から72歳、「V」は73歳から121歳までの人々の死が取り上げられている。

   龍馬ブームはまだまだ続くようだが、本書を読みながら、幕末は龍馬と同世代の若者の命を数多く奪ったことに改めて思い知らされる。坂本龍馬32歳、清河八郎33歳、近藤勇、土方歳三34歳、高杉晋作はまだ28歳であった。高杉は病死だが、龍馬、清河は暗殺、近藤は斬首、土方は箱館で戦死、まさに「死にざま」は様々だ。
   日本語には「死」を表現する言葉が数多くあるが、「夭折」「夭逝」は若くして亡くなった才人たちに相応しい言葉ではなかろうか。小説「たけくらべ」の樋口一葉、「お正月」「荒城の月」「花」を作曲した瀧廉太郎はいずれも24歳で亡くなっている。死因はふたりとも結核で、痛ましいというほかはない。「一握の砂」を遺した石川啄木も、貧窮生活の中、結核のため、26歳でその生を終えている。映画「鬼龍院花子の生涯」「瀬戸内少年野球団」などに主演した女優夏目雅子は27歳、白血病のため27歳で逝った。今年は没後25年、それでも生きていればまだ52歳であった。
   日本のプロレスブームの立役者、力道山はナイトクラブでちんぴらに刃物で腹部を刺され、それが元で腹膜炎を起こし、39歳で絶命した。時に1963年12月15日。この数ヶ月前、小生は父親に連れられてプロレスを観戦、「力道山VSブラッシー」をこの目で見ている。この年の11月にはアメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが狙撃されて46歳で死んでいる。

   なお、石原裕次郎は1987年、美空ひばりは1989年、いずれも52歳で亡くなっているが、本書には記載されていない。
   著者の山田風太郎は「くの一忍法帖」「柳生忍法帖」などの忍法帖シリーズや、明治の探偵モノ、現代ミステリーと幅広く執筆した人気大衆作家であったが、2001年79歳で寿命を終えた。さて小生の場合はいくつまで生きるか、馬齢を重ねて酔生夢死、というところがお似合いのようであるが・・・。

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